過去問題の重要性

 どのような学習方法が効果的か、という事には個人差があるかとは思いますが、私は過去問題を解いて、解けなかった問題を解けるようにする、という繰り返しが特にトレーニングの効果が高く、得点力を伸ばすために特に有効だと考えています。

因みに私は通関士試験と同じ程度の難易度の国家試験にいくつか合格しています。資格マニアとバカにされる事もよくあります。そんな私ではありますが、通関業に関する知識ばかりでなく、資格試験に共通した合格のためのノウハウも確実に得ているのではないかと思います。

唐突ですが、この記事をご覧になっている皆さんがもしも、一ヶ月後にクイズ大会に出場する事が突然決まったとしたら、どんな準備をするでしょうか。

すると本番に似ていそうなクイズの本を集めてきて、まずは自分なりに答えてみて、正解を確認し、その問題に関する正確な知識を覚えるという事を数多く繰り返すという、そんな準備の方法を思い付く人が結構多いのではないかと思います。

私もおそらく同じ様に考えると思います。そして、この様な準備のしかたこそ、資格試験の受験に備えるために実はとても有効なものだと思うのです。

しかしクイズ大会ではなく資格試験の話になったとたん、もっと違った準備をする人が多いように思います。例えば、内容を頭に入れようとテキストを何度も丁寧に通し読みしたり、自分なりのノートをまとめたりする事に時間を使ってしまい、問題を繰り返し解くというメニューにははなかなか取り掛からない人が多いと思います。お金を取って受験指導をしているスクールなどでも同様の事をしています。テキストを読ませたり、授業形式の解説をしたりする事に多くの時間を使ってしまってしまうスクールが多数派で、「ひたすら問題を解きなさい」という教育をしているスクールはむしろ少数派だと思います。

もちろんテキストの通し読みにも効果はあると思います。特に学習の初期段階では、試験範囲の全体像が把握でき、大いに効果的だと思います。しかしそれは手早く一度行えばもう十分で、そこにあまり多くの時間を配分すべきではないと私は考えています。結局のところ、どれだけじっくりと繰り返してテキストを通し読みしたところで、試験で点数を取れるようなノウハウなどなかなか得られないものです。おそらく人間の性質として、ただテキストを読んだだけで頭に入れられる情報などごく僅かなのではないかという気がするのです。読んだだけで頭に入ってくるのはよほど印象的な部分だけで、サッと一回読むのと、繰り返しじっくり読むのとで、掛ける時間の違いに見合うだけの成果の違いは無いでしょう。そもそも、テキストを頭から順に読んでいるだけでは何がなんでも覚えようというような、強い意欲が湧いてきません。少なくとも私自身は確実にそうです。

しかしひとたび状況が変わり、「この問題で正解するには、こういう知識を持っていなくては正解する事ができない」という様に、具体的で実戦的な場面になると、状況が一変します。なんとかしてその知識を頭に入れようと、意識が活性化します。そして、そのようにひとつの問題を解くという具体的な目的を持って頭に入れた知識というのは、一旦頭に入るとなかなか忘れません。

それをひたすら繰り返したとしましょう。まずは10回繰り返したとします。すると、10タイプの類題が出題されたときに、対応できるようになります。さらに回数を重ねて、20回、30回と繰り返せば、対応できるタイプの問題がどんどん増えていきます。はじめは広い試験範囲の中にポツポツと点があるような状況ですが、次第に点の密度が濃くなり、やがては試験範囲全体を埋め尽くしていく状態になって行きます。

5肢択一式の問題ですと、1問に5個ある選択肢のひとつひとつの正誤の判定をするという作業ですから、もう一段回ネストされたメカニズムがあると思いますが、それでも数をこなすに従って対処できる問題の種類が増えていくという基本は同じです。

もちろん、個々の問題の解き方のノウハウをどのようにして習得するかといえば、テキストの該当部分を読むという作業がメインです。しかし、この様に具体的な目的のために調べ物としてテキストを読む行為と、テキストを一冊の読み物のように先頭から通し読みする行為とでは、頭に入ってくる情報の濃さや深さに雲泥の差があるでしょう。その違いはとても大きなものだと私は思います。

しかしなぜ、多くの人は問題をひたすら解くという行為でなく、教科書の通し読みやノートづくりという行為をしたくなってしまうのでしょうか。

それには、日本の学校教育の影響が大きいと私は思います。学校教育では、テストの点数で評価するという事ももちろん行っていますが、あまりそこばかりに評価の比重が集中していません。授業の場に出席する事、課題をこなす事、運営を妨げす協力的でいる事など、学習の成果だけではなく、学習のプロセスまでもが範囲に加えられ、苦手な事があっても別の得意な事を頑張ればある程度リカバーできる様に調整されています。

資格試験の合格を目指す時には、「試験勉強」「受験勉強」という様に「勉強」という言葉に多く接します。その「勉強」という語感から、これまでの人生で経験した事のある学校教育の勉強にイメージが直結してしまい、ある種の混同が生じているのだと思うのです。

資格試験というものは、実際のところ学校教育と共通点がそれほど多くありません。資格試験とはもっぱら一発勝負の試験のみで評価するもので、態度や努力を積み重ねてきたプロセスなどは一切評価の対象になりません。学校教育よりはむしろ、例えばクイズ大会や、スポーツの試合のようなものとより多くの共通点があるものです。そして厳しい話になりますが、試験で点を取る能力が弱く、それを強化できない限り、どんなにセンスがあっても、知識があっても、情熱があっても、生活態度が真面目でも、合格できません。

そんな資格試験に向けた対策として有意義な事とは実にシンプルで、得点力をつける事です。どうすれば得点力がつくのかというと、手軽な手段としては、類似した問題で正解するための練習をする事です。練習でいつもできている事は、本番でもまずできます

そうした練習の材料として適していて、しかも手軽に手に入るのが過去問題です。試験によってその難易度により違いがあると思いますが、通関士試験ならば、直近5~7年分程度の過去問題を用意して、適切な時間内に全ての問題で正解できるように解き方を徹底的にマスターしてしまえば、まず合格できるでしょう。

合格したい人は、とにかく過去問題を研究し、そして練習してみて下さい。


通関士試験問題・解説集 2022年度版


過去問題に解説の付いた問題集です。直近3年分を全問そのまま掲載していますので、特にお薦めです。通関士試験でこういう形式の問題集はおそらく唯一のタイトルだと思います。

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