法令のストラクチャーを知っておく

通関業・通関士試験の関連法規には色々なものがあります。

そして受験勉強ではそれらの関連法規の内容を覚える事がかなり必要です。

法令の中にはキーになる重要な条項がいくつかあります。そうした条項は、できれば内容だけを覚えるのでなく、条文の原文を確認しておくと良いと思います。

そうすると、例えば問題集やテキストの解説を読んでも文章がわかりづらくて何を言っているのか分からない場合だとか、目先の変わった出題方式になったりしたときだとか、色々な場合に対応しやすくなります。

通関士試験の受験勉強向けに使える法令集で、関税六法というものがあります。ただ、価格がかなり高く、リリースも遅めです。お金に余裕のある人は買えば確かに勉強しやすくはなりますが、高くて買えないという人は総務省がネットに公開しているe-Govでも勉強はできます。ただ、いずれの方法にしても法規に関しては条文を確認しながら勉強した方が、覚えやすいのではないかという気が私はしています。


関税六法の表紙画像


そのように法令の原文を読むにあたり、わが国の法律のストラクチャーをざっくりとでも理解しておくと頭の中が整理しやすくなり、一気に読み進みやすくなりますのでおすすめです。


法律・政令・省令

ひと言でいうと、わが国の法令には大きな法令と細かい法令があります。大きなものが法律で、それよりも細かいものが政令、施行規則などです。

例えば関税法でいうと

  • 関税法(法律)
  • 関税法施行令(政令)
  • 関税法施行規則(省令)

があります。最も大きな方針的な事を定めているのが関税法、それより実務寄りの細かい事を定めているのが関税法施行令、さらに細かい事を定めているのが関税法施行規則です。

たとえば関税法に次のような条文があります。

関税法2条1項十一号

「開港」とは、貨物の輸出及び輸入並びに外国貿易船の入港及び出港その他の事情を勘案して政令で定める港をいう。

「政令で定める港」というのは、関税法施行令で定める、という意味です。ざっくりいうと、関税法では「『開港』っていう種類の港があるよ。どういう港かっていうのは関税法施行令で決めてあるから、そっちを見てちょうだいね。」という意味です。法律というのは、これぐらいの事までを定めていて、それよりも細かい事は定めていないのが一般的です。

そこで実際に関税法施行令を見てみると、次のような条文があります。

関税法施行令1条1項

関税法(以下「法」という。)第二条第一項第十一号(開港)に規定する政令で定める港は、別表第一に掲げる港とする。(以下略)

実際に関税法施行令には別表第一というリストがあり、北海道の紋別から沖縄の石垣まで、開港がずらりと示されています。
この様に、大きな事は法律で定めて、さらに細かい事については政令で定めてあるという場合が多いです。

省令に関してはさらに細かい事が定めてあります。「財務省令で定める~」という文言は、関税法にも関税法施行令にもどちらにもあります。

施行令よりもさらに細かいものに、通知・通達というものがあります。関税法に関して言えば、財務省告示〇〇号関税法(令和○○年法律第○○号)のようなタイトルです。試験では絶対に出題されないとは言いませんが、ほとんど出題されないレベルです。試験では、政令レベルまでを中心に学習をするのがよいでしょう。

因みに、一般的に法律は国会で作られていて、政令以下は内閣で作られています。そして法律、政令、省令、通知等をまとめて法令と呼びます。

条・項・号

わが国の法規はリスト条の構造になっています。

そのリストの一番大きな項目が「条」です。そしてその条文の中身をさらにネスト構造にしてリスト化する場合に「項」に分けます。さらに項をネスト化する場合に「号」にします。その下には「項の細分」というものがあり、「イロハ」が振られ、さらに「(1)(2)(3)」が振られます。例えば「関税法61条1項一号イ(1)」というような条文があります。

表記の仕方にはちょっとしたクセがあり、条文が複数の項や号に分かれている場合、1項目や一号目は省略して表記され、2項目以降、あるいは二号目以降には「2」「3」や「二」「三」の文字が表記されます。

ところで、通関業や、その関連の業界ではあまり馴染みがありませんが、建築士など建築業界の人は、条や項は算用数字で、号は漢数字で、という様に慣例的に使い分けています。立法側がそうした表記方法を定めている訳ではありませんのでこだわる必要はありませんが、実際的に読みやすくなるので、ひとつのノウハウとしておすすめです。

このブログの人気の投稿

年末年始の休みの過ごし方は